Archive for the ‘相続’ Category

被相続人の上場株式等に係る口座の調査について

2023-04-19

遺産分割をするに当たっては、被相続人の遺産を把握することが必要になりますが、被相続人が上場株式等も保有していたと考えられる場合は、その調査も必要になります。
被相続人の自宅に証券会社から年間取引報告書などの書面が届いていた場合は、当該書面を確認して証券会社に問い合わせることで調査可能です。

そのような書面がない場合でも、株式会社証券保管振替機構(通称:ほふり)に対して、上場株式等の口座が開設されている証券会社、信託銀行等の情報の開示請求をすることによって調査が可能です。当該情報の開示結果を基に、各証券会社、信託銀行等に問い合わせることで、上場株式等の銘柄名、取引履歴、保有残高を確認することができます。

詳細については、ほふりのウェブサイトに掲載されております。もしご自身での調査が難しいという場合は弊所で調査を代行することも可能ですので、お気軽にご相談ください。

文京区・千代田区の遺言・相続 法律相談 小野貴朗総合法律事務所

遺産分割前における預貯金の払戻制度について

2023-01-31

被相続人の預貯金については、従前は相続人全員の同意を得なければ遺産分割前に相続人単独での権利行使が認められないとされておりました(最高裁平成28年12月19日決定)。しかし、相続債務を弁済する必要があったり、相続人の生活費等を支出する必要があるなどの理由から、被相続人の預貯金を遺産分割前に払い戻す必要がある場合に不便が生じておりました。
そこで、相続法改正により、相続人が遺産分割前に裁判所の判断を経ることなく、一定の範囲で遺産に含まれる預貯金の払戻を受けることができるようになりました。

各共同相続人が単独で権利行使可能な金額は、以下の計算式で求められる金額となります。ただし、同一の金融機関(同一の金融機関の複数の支店に預金がある場合はその全支店)からの払戻は150万円が上限になります。

口座ごとの相続開始時の預金額×1/3×払戻を求める相続人の法定相続分

払戻の際に必要な書類としては、本人確認書類、印鑑登録証明書のほかに、概ね、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本(全部事項証明書)・除籍謄本・改製原戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本(全部事項証明書)が必要になります。ただし、金融機関によって必要となる書類が異なる場合がありますので、金融機関に事前に確認した方が良いでしょう。

本制度により払い戻された預貯金は、相続人が遺産の一部分割によりこれを取得したものとみなされ、後日の遺産分割において調整が図られることになります。

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被相続人が加入していた生命保険の調査について

2022-05-13

被相続人が生命保険に加入していた場合、生命保険金の請求をすることが考えられますが、被相続人の資産状況について、相続人が生前に把握できていないことも多々あります。被相続人の生命保険の加入状況について調査するためにはどのようにしたら良いのでしょうか。

この点については、昨年7月に生命保険協会が「生命保険契約照会制度」を設けました。これは、保険契約の存在が分からない相続人に代わって生命保険協会が生命保険会社各社に照会をかけ、生命保険契約の有無を調べてくれるものです(なお、生命保険契約の種類の調査や保険金等の請求の代行は行っておりません)。照会に当たっては所定の手数料や戸籍謄本等の書類が必要になるほか、法定相続人等に照会者の範囲が限られております。

調査対象となる生命保険契約の範囲については、生命保険協会が照会を受け付けた日現在有効に継続している個人保険契約となっており、財形保険契約及び財形年金保険契約、支払が開始した年金保険契約、保険金等が据え置きとなっている保険契約は対象から除くとされております。

生命保険契約照会制度を利用しない調査方法としては、被相続人の預金通帳から調査する方法が考えられます。
一般的に保険料は定期的に預金口座から引き落とされているので、預金通帳を見て保険料の引き落としがされているようであれば、その保険会社との間で生命保険契約があることが推測されます。ですので、そのような引き落としがあれば直接当該保険会社に照会をして調査することができます。

その他の方法としては、被相続人の自宅に保険会社からの郵便物が届いているようであれば、その保険会社との間で保険契約がある可能性がありますので、直接当該保険会社に照会をすることも考えられます。

生命保険の調査については、戸籍謄本等の必要書類を揃える必要があり、手間がかかることも多いです。弁護士であれば、生命保険も含めて被相続人の遺産全般の調査をすることができますので、詳しくは弁護士に相談することをお勧めします。

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遺言が成立した日と相違する日の日付が記載されている遺言書

2021-11-12

民法968条1項は、「自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。」と規定されています。この文言を厳格に考えると、遺言書を書いた日と異なる日付が遺言書に書かれていた場合、遺言書が無効となるはずです。

しかし、同条の趣旨は、遺言者の真意を確保すること等にあるところ、必要以上に遺言の方式を厳格に解すると、かえって遺言者の真意の実現を阻害するおそれがあります。
かような趣旨に基づき、近時の最高裁判例において、遺言者が入院中の平成27年4月13日に遺言の全文、同日の日付及び氏名を自書し、退院して9日後の同年5月10日に押印したといった事実関係の下では、遺言書に真実遺言が成立した日と相違する日の日付が記載されているからといって直ちに遺言が無効となるものではない旨判示したものがあります(最高裁令和3年1月18日判決)。

もちろん遺言書を書いた日の日付を書くのがベストであり、民法968条1項の文言に沿った遺言書となります。ただ、一定の事実関係の下においては、遺言が成立した日と異なる日付でも有効となる余地があるということですので、もし遺言書を書いた日と異なっている日付の遺言書が出てきたとしても諦める必要はなさそうです。もちろん事案によって異なる判断となりますので、もし日付の記載に疑義があるような遺言書が出てきたときは、弁護士に相談することをお勧めします。

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相続人の調査について

2021-04-02

遺産分割を進めるに当たって、まず最初に確定すべきは誰が相続人となるかです。当然のことではありますが、当事者となる者が全員揃って遺産分割協議をしなければ、遺産分割は有効とならないからです。

相続人として誰がいるかは戸籍を調査すれば判明するのが通常です。また、被相続人が亡くなるまでの間の親戚付き合い等から相続人として誰がいるかは大方判明しているのが通常です。しかし、被相続人に子がおらず、兄弟が相続人となる場合は二次相続が発生していることも多く、その場合は戸籍を辿っていくのが容易でない場合も出てきます。時として相続人が何十人になることもありますので、兄弟相続の場合は相続人の調査に注意が必要となります。

また、当事者が自ら戸籍の調査をしようとしても戸籍謄本を請求できる範囲には限りがあります。ですので、自ら戸籍を調査するのが難しい場合は、職務上戸籍謄本の請求ができる弁護士に調査を依頼するのが良いでしょう。弁護士であれば戸籍調査後の遺産分割手続も依頼することができますし、もし相続人間で対立が生じたような場合にも代理人として対応することが可能となります。遺産分割において生じる可能性のある法的問題に対応できるのが弁護士の強みです。

相続人については、その範囲に争いが生じる場合もあります。例えば、被相続人と養子縁組をした事実がないのに、戸籍上は養子縁組した子が記載されているような場合もあります。相続人の調査をして、その範囲に問題が生じたときは、訴訟等の手続により相続人の範囲を確定させた上で遺産分割をすることになります。専門的な話になりますので、お気軽に弊所までご相談ください。

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自筆証書遺言書の保管制度を利用した遺言書の作成支援について

2021-03-29

遺言書を作成するに当たって保管場所をどこにするかは考えどころです。といいますのも、せっかく遺言書を書いても相続人に発見されず紛失してしまったり、また悪意ある相続人に捨てられてしまったりしては遺言意思が実現できないからです。
今般制定された法務局における自筆証書遺言書の保管制度は、そのような遺言書の紛失・破棄等を防止するものとして有意義な制度であり、また費用も安価ですので、手軽に遺言書を残したいと考える方にとっては使い勝手が良いといえるでしょう。

ただ、法務局では遺言書の内容については審査しません。せっかく遺言書を残せたとしても肝心の内容がしっかりしていなければ、やはり遺言意思が実現できないことになります。
弊所では、法務局での自筆証書遺言書の保管を希望しつつも、遺言書の内容をしっかりさせたいという方のニーズにお応えするため、自筆証書遺言書の作成支援(遺言書の起案・財産調査等)も行っております。また、一人で法務局に行くのが心配という方のために法務局への同行も可能です。

公正証書遺言の作成に比べて費用もリーズナブルにできますので、自筆証書遺言書の作成を検討されている方はお気軽にご相談ください。

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自筆証書遺言書の保管制度が始まりました

2020-07-10

本日から法務局における自筆証書遺言書の保管制度が始まりました。自筆証書遺言は自宅で保管されることが多いですが(仏壇や金庫にしまっておくなど)、遺言書が紛失するおそれがあったり、相続人により遺言書の廃棄、隠匿、改ざんが行われるおそれがあったりと、相続をめぐる紛争が生じるおそれがありました。これらの問題の原因の一つに、自筆証書遺言を確実に保管し、相続人がその存在を把握することができる仕組みが確立されていないことがあるとの指摘がなされていました。
こで、このような遺言書の紛失、隠匿等を可能な限り回避し、相続をめぐる紛争を防止するための制度として、公的機関(法務局)で遺言書を保管する制度が創設されました。

遺言書の保管の申請先は、①遺言者の住所地、②遺言者の本籍地、③遺言者が所有する不動産の所在地のいずれかを管轄する法務局になります。遺言書は法務省令で定める様式に従って作成したものであることが必要です。また、申請に際しては所定の手数料がかかります。
遺言書の変造等を防止する観点から遺言者は自ら法務局に出頭する必要があり、代理人や使者による申請は認められません。ですので、病気等のため遺言者自らが法務局に出頭できない場合は、公証人に出張を求めて、公正証書遺言の作成を検討することになるでしょう。

遺言書保管の申請がされた遺言書の原本は法務局で保管されます。また、遺言書の画像情報等が電子データでも保管されます。遺言書の保管が開始された後でも、遺言者は遺言書の保管の申請を撤回することができます。ただし、遺言書の保管申請の撤回をしたとしても、遺言自体を撤回したことにはなりません。

遺言書の保管制度により保管された遺言書については、遺言者の死亡後、検認手続が不要になるため、自筆証書遺言の利用を促進する効果が期待されます。もっとも、法務局では遺言の内容については審査しませんので、遺言書の内容・目的等に応じて公正証書遺言を選択することも検討する必要があるといえるでしょう。

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特別寄与料の請求について

2019-11-11

例えば、親が亡くなり子どもが相続人の場合、子どもの配偶者は親の相続人ではないので、親の遺産を相続する権利がないのが原則です。しかし、子どもの配偶者などが被相続人の療養看護に努めるなどの貢献を行った場合には一定の財産を分け与えることが被相続人の推定的意思に合致する場合も多いと考えられます。そこで、改正相続法は、相続人ではない被相続人の親族が、相続人に対して、その貢献に応じた額の金銭(特別寄与料)の支払を請求することができるとする制度を新設し、相続人でない者が遺産の分配を受けることができないという不公平を解消させることとしました。この規定は令和元年7月1日から施行されていますが、施行日前に開始した相続については改正前の法律が適用されます。
特別寄与料を請求できる者は被相続人の親族(六親等内の血族、配偶者、三親等内の姻族)です。内縁の配偶者や同性のパートナーなどは含まれません。

特別寄与料を請求するためには、被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をしたと認められることが必要です。請求者が被相続人から介護の対価を受け取っていた場合は「無償」という要件を満たさないので、特別寄与料は請求できません。
そして、権利行使期間についてですが、当事者間で協議が調わない場合、①特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から6か月以内、又は②相続開始の時から1年以内に家庭裁判所に調停・審判の申立をする必要があります。この期間制限は割と早いので注意が必要です。

家庭裁判所は、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して特別寄与料の額を定めます。算定の目安については従来の寄与分における算定方法が参考になりますが、寄与分における療養看護型の場合、被相続人が要介護度2以上の状態にあることが一つの目安になるとされています。そして、相続人は介護の専門家ではないこと等の事情を考慮し、裁量割合として通常は0.5~0.8程度を乗じて減額されています。特別寄与料の場合も、基本的にはこの裁量割合の幅の範囲で個別具体的な事情を考慮して算定されるものと思われます。

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遺留分の放棄について

2019-07-31

遺留分とは、一定の相続人のために、相続に際して法律上取得することが保障されている遺産の一定割合のことをいい、遺族の生活保障といった観点から認められています。遺留分権利者は、兄弟姉妹を除く法定相続人(配偶者・子・直系尊属)です。
他方、この遺留分は放棄することもできます。相続が発生した後においては、遺留分を放棄することは自由です。これに対して、相続開始前に遺留分を放棄するには家庭裁判所の許可が必要です。家庭裁判所の許可を得るためには、遺留分権を有する相続人が、被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所に対して、遺留分放棄の許可審判申立てをします。

家庭裁判所の許可基準としては、①遺留分権利者の自由意思に基づくこと、②放棄理由の合理性・必要性・代償性が挙げられており、事案に応じた判断になります。
なお、司法統計によると、全家庭裁判所における遺留分放棄の許可審判申立てについて、
・平成27年度は、既済総数1152件のうちの1076件が認容
・平成26年度は、既済総数1193件のうちの1135件が認容
となっており、9割以上が認容となっています。

遺留分放棄許可の審判があると、申立てをした相続人の遺留分権はなくなります。しかし、相続人でなくなったわけではありません。被相続人としては自己の財産を自由に処分できるようにしておくのが目的でしょうから、別途遺言書を作成して自己の財産の処分について取り決めておく必要があります。
また、遺留分を放棄したからといって債務が承継されないことにはならないので、仮に債務を承継したくない場合は、相続放棄の手続を取る必要があります。
遺留分放棄の許可審判申立てをする場合、許可基準に合致する事実関係を拾い上げて申立書に反映させていく必要があります。遺留分放棄について検討されている方は、お気軽に当事務所までご相談ください。

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相続分はどのくらい?

2019-07-23

 遺産分割を行うためには、相続人間で遺産をどのような割合で分割するか(相続分)が決まっていなければなりません。相続分について被相続人が遺言で何ら意思を表明していなかった場合のために、民法は、以下のとおり相続分を定めています(法定相続分)。

1 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各2分の1
2 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は3分の2、直系尊属の相続分は3分の1
3 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は4分の3、兄弟姉妹の相続分は4分の1

    従前、嫡出でない子の相続分は嫡出子の相続分の2分の1と定められていましたが(民法900条4号ただし書)、平成25年9月4日の最高裁決定により同規定は憲法14条1項(法の下の平等)に違反していると判断されました。これにより、最高裁決定の翌日である平成25年9月5日以後に開始した相続については、嫡出でない子と嫡出子の相続分は同等のものとして扱われます。
    なお、最高裁は、従前の規定は遅くとも平成13年7月当時において憲法14条1項に違反していたと判示しましたが、この違憲判断は、平成13年7月1日から平成25年9月4日までに相続が開始した他の事案につき、従前の規定を前提としてされた遺産分割の審判その他の裁判、遺産分割協議その他の合意等により確定的なものとなった法律関係に影響を及ぼすものではない旨判示しています。したがいまして、そのように確定的なものとなった事案については、最高裁決定によっても効力は覆りません。

 また、昭和55年改正前の民法では、上記1については子の相続分は3分の2、配偶者の相続分は3分の1、上記2については配偶者と直系尊属の相続分は各2分の1、上記3については配偶者の相続分は3分の2、兄弟姉妹の相続分は3分の1とされており、現在の規定とは異なっておりました。この民法改正は、配偶者の地位の強化という観点から行われたものです。
 この民法改正は昭和56年1月1日から施行されましたので、昭和55年12月31日以前の相続については旧法が適用されます。被相続人の死亡が昭和55年12月31日以前の遺産分割事件は現在でもあり得ますので(遺産分割が長年放置されていた場合)、この場合、法定相続分には留意する必要があります。

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